金沢でちょっと贅沢なひととき その④

我々の目の前に現れたその正体とは、「ぼんぼり」である。

タイミング的にはホントに偶然だったのだろうが、ちょうど我々が祭りのステージを横切った、まさにその瞬間。辺り一面がパッと明るく照らされたのだ。
祭りの名前にも入ってるぼんぼり達が一斉に点灯したのだ。

これは後に聞いた話だが、祭り当日以外も7時頃からぼんぼりを点灯するようにしており我々はちょうどそのタイミングで外を出歩いていたということらしい。
これまたテンションが上がる野郎2人であった。

 



なんやかんやとしていたらいよいよ夕食の時間が迫ってきた。
旅館に迷惑をかけるわけにも行かないのでさっさと戻ることにしよう。


部屋に戻るとちょうど準備を始める直前だったようで、なんとか間に合った。

さて、今回の夕食であるが、なんと部屋食である。
昨今の宿泊業界では高級志向の宿でも食事処での提供が増えつつある中で、こういうおもてなしは中々嬉しいものである。
献立は地元食材を中心に、お造りや天ぷら、煮物、茶碗蒸しetc……質、量共に非常に満足いくものだった。
特に能登牛のすき焼きは絶品で、とても柔らかいお肉が口の中でとろけて一瞬で食べてしまった。
そして一緒に頼んだ地酒の日本酒がこれまた料理に合う。
流石、酒蔵で有名な金沢と感じた一時であった。

地元食材が使われた料理達


食欲を満たし、しばし寛いでいる我々であったが、仲居さんが部屋にやってきた。
どうやら布団の準備をするらしい。
満腹故に暫く動けそうにない我々は、部屋の端でぼーっと見ていたのだが、慣れた手つきで押入れから布団達を取り出し、目にも止まらぬ速さでシーツ敷く様子は流石の職人芸で、"おぉ……"とつい感嘆の声が漏れてしまう。
というのも、同様の様子が劇中でも描かれているのだ。
思わぬ体験にこれまたテンションが上がる2人であった。

 

お布団の写真(手前は私が既に横になったので乱れている)

さて、布団の準備も出来たところでようやく温泉に入ることにしよう。
ここの温泉は硫酸塩・塩化物泉で、九州の硫黄泉のような温泉らしい匂いはあまり感じなかった。

また、温度は丁度よい塩梅でそこまで熱い訳では無い。
浴槽は普通サイズの内湯と小さめの露天風呂が一つずつ。露天風呂には打たせ湯もあるが、この時期に使うのは少々冷たさが勝ると思う。
友人と明日のスケジュールや他愛もない話をしたりしながら一時間弱くらいだろうか、そろそろのぼせてきそうだったので、良い頃合いと切り上げた。

公式HPより

そこそこ長風呂をしてしまったのでこのまま部屋に行くのもなんだかなぁ、と思っていると、この旅館には見晴らし台が有ることを思い出した。
旅館に対して結構新しい感じなので、もしかしたら祭りを眺める為に増設されたものかもしれない。
生憎祭り本番は明日なので、今は目の前の温泉街と冒頭で触れたぼんぼり達しか見えないのだが。
目線を上げて夜空を見ようと思ったものの、こちらは薄雲が出てしまっている様子。
まあ、街の静寂に包まれて夜風に当たるのもまた一興と、温泉で火照った身体を冷ましたのだった。

見晴台からは稲荷神社一帯が一望できる

さて、部屋に戻った我々はすっかり酔いも覚めてしまったので改めて飲みなおす事にした。
仲居さんに頼んでおいた地ビールを冷蔵庫から取り出して乾杯。
今夜の肴?は金沢のフルーツ大福である。
今更ながらビールに和菓子はどうなんだろうと思うが、まあそこは旅のノリというやつだ。
さて、このフルーツ大福だが、知人が美味しそうなのを見つけたという触れ込みで買ってきてくれたのだが、いざ開封してみると妙にデカい。

 

 

付属の糸で割ってみると大きさに納得した。
これ、フルーツが丸ごと入っているのだ。

まさか丸ごと入っているとは......

明らかに2人で食べるような量ではないのだが、切る度に出てくる丸ごとフルーツのシュールさに爆笑しながら夜は更けていくのであった……

 

金沢でちょっと贅沢なひととき その⑤に続く