442年ぶりの天体ショー
さて、11月8日の夜はこのニュースで持ちきりであった。
442年ぶりに皆既月食中に惑星食が見られるというものだ。
といっても世間で、あれが天王星だ、惑星食だ、と盛り上がっていたのは一部の天文マニアくらいで、大半は皆既月食がメインであろう。
ぶっちゃけ都市部では、月食中であっても天王星をはっきり確認するのは難しい。
比較的光害を受けにくい高層階に住んでいる人や視力が良い人でないと肉眼では確認出来なかったのではないだろうか。
かくいう私も双眼鏡を使わないと見つけることが出来なかった。
まあ次回の機会は322年後らしいので、その瞬間に立ち会えただけでもかなり貴重ではあるのだが。
ただ、暗いニュースが続く中で、こうして皆で空を見上げて話題を共有するというのはちょっぴり心が軽くなるような感覚を覚えてしまう。
さて、皆さん皆既月食を見て、こう思ったことは無いだろうか。
月食なのに完全に暗くならないじゃないか、しかもなんか赤くなっている、と。
実はこれ、日食とは大きな違いがあるために起こっているのだ。
それは、太陽の光を遮るものが”地球”か”月”かということ。
もっと細かく言うと、”大気”があるかの違いだ。
まず完全に暗くならないのは、光の屈折が関係している。
日食の場合は大気を持たない月が太陽を遮るため、直進する光は完全に遮られて地上は殆ど真っ暗になるが、月食の場合は光が大気中を屈折し、それが地球の裏に回り込むため、月に多少の光が届いてしまうのである。
また、赤くなる理由については、上記の屈折時に光が散乱していくのだが、この際に色(波長)によって散乱しやすさが違うことで、最終的に残る割合が変化するためである。
青い波長は散乱しやすく、赤色はしにくい。そのため、大気中を通過して地球の裏に回り込む光には赤い波長の方が多く残り、それに照らされる月も赤っぽく見えるのである。(朝焼けや夕焼けが赤いのも同様の理由。日中より光が差し込む角度が浅くなり、大気を通過する距離が長くなるため。)
いずれにせよ、天体達のスケール感の大きさを感じてしまう出来事である。
次に日本全国で皆既月食が観測できるのは3年後の2025年9月8日である。
その際には一夜限りの天体ショーに思いを馳せてみてはいかがだろうか。